スティーブンコーチのレポート

このレポートは里谷選手のプライベートコーチであるスティーブン氏が記したものです。

スティーブンコーチのレポート6

どの種類のジャンプを選ぶか

キャンプ期間 2005年10月19日〜10月29日

キャンプでは、今後の試合への目標に向け、精神面と技術面両方で改良が見られました。最も重要な要素はどの種類のジャンプを選ぶかという点です。今回、多英選手は27秒前後のタイムで滑ることができました。雪の状態にもよりますが、これは五輪の女子選手の水準としてはトップレベルです。もし彼女がこのスピードで滑り、なおかつターンで平均4・7ポイントを維持することができれば、あえてエアで難易度の高い技に挑戦し危険を冒すより、むしろターンとスピードのアップに集中する方がよいと考えています。
現在のトレーニングは、「バックフル」と「バックフリップ」が中心ですが、今後は「フロントフリップ(=スーパーマン)」の練習に力点を移していきます。
これにより、多英選手の大幅なスピードアップを実現できると思っています。

ジャンプの種類は、「バックフル」→「バックフリップ」という順番か
「バックフリップ」→「フロントフライアウェイフリップ」という順番のいずれかになるでしょう。

「バックフル」
有利点
1. 難易度 1.57
2. 着地の際の視界が容易
3. オリジナリティ

不利点
1. ジャンプに入る前と終わった後のスピードが遅い
2. 技術的な理由からフォームの自由度が少ない
3. フォームが難しい
4. 多英選手の集中力と修練度

「フロントフライアウェイ」
有利点
1. 審判と観客はフィニッシュを重視
2. ジャンプに入る前と終わった後のスピードが早い
3. オリジナリティ
4. 多英選手の自信度とリラックス度
5. (審判団の)主観が入る技術のため、フォームの自由裁量度が高い

不利点
1. 「目隠し状態」の着地(着地の際目視できない)
2. 着地に高い力業を要する
3. 難易度はバックフルより低い(1.44)

次のジャンプ(練習)は、岐阜で行うことになっており、エアのトレーニングを継続します。雪上で安全に滑るための熟練度を上げることが目的です。
日程は11月4日開始で、雪上で安全に滑れるようになるまで続けます。
降雪量にもよりますが、その後のスケジュールは北米か北海道でジャンプ練習を開始する予定です。今一番の懸念は多英選手の体力です。
バランス感覚を鍛えるための体力強化は相当厳しいものになるでしょう。
五輪コースで27秒で滑るために、多英選手はモーグル上を軽快にこなす必要があり、そのためには脚力の強化が不可欠なのです。

エアのトレーニングにかける時間の都合で、全体の計画は大幅に変わりました。
私たちは多英選手の脚力の回復のために2ヶ月を費やすことになるでしょう。
タイトなスケジュールなので、モチベーションを維持できるよう精神面にも気を配っています。

以上

スティーブン・フィアリング
国際フリースタイルスキーの前メンバー。
カナダスキーチーム、日本スキーチーム、日本オリンピック委員会、
韓国スキー協会でコーチを経験。
1994年に来日。
日本語も堪能で文化もよく理解している。