スティーブンコーチのレポート

このレポートは里谷選手のプライベートコーチであるスティーブン氏が記したものです。

スティーブンコーチのレポート3

トランポリン、ウォータージャンプ

キャンプ期間 2005年6月1日〜6月30日
ロケーション レイクプラシッド、ニューヨーク州ウィスラー、カナダ

キャンプは午前中にトランポリン、午後はウォータージャンプを使用する手法で 始まりました。
メニューの大半はトランポリンで練習した技術をウォータージャンプに取り入れることに割いたので、最初の3週間はニューヨーク州のレークプラシッドで行いました。私たちはカナダ代表チームの練習日程にあわせてスケジュールを組み、代表チームのエア担当コーチとトレーニングを進めることが可能となりました。今回のトレーニングで明らかになった里谷選手の技術上の課題は、水上での「バック・フル」のテクニックに限界があることです。
そこで基礎練習としてトランポリンを使い、エアの部分を重点的に強化しました。大技を狙う攻めの訓練を行うか、スローテンポにして慎重に進歩させることを優先するか、両にらみで検討しました。バランスの悪化を避けるため、ウォータージャンプでは正方向の「バック・レイアウト」とトランポリンを使いスピードを落として「バック・フル」を完全なものにすることに集中しました。「キャンプ−3」のこのような練習メニューの修正によって、「キャンプ−4」も当初のモーグルの基礎練習から、ウォータージャンプ中心の練習に変更することになりました。実際、里谷選手はこのようなトレーニング内容の変更も難なくこなしていましたが、一方でアクロバティックな動きについてはまだ未熟な部分が多く、またウォータージャンプ台を有効利用するためにも、エアの練習には相当長い時間をかける必要がありました。今後、キャンプ地はカナダのケベック市とレーク・プラシッドと、離れており、引き続きカナダ代表チームの練習日程とあわせていく予定です。
 
キャンプの第二段階はカナダのウィスラー市に移動して行いました。これはスキーの基礎練習を行う「ミニキャンプ」となります。
ミニキャンプの目的は、上半身や腕のポジションと股下部分のポジショニングの修正です。私たちは一つ一つの修正をしやすくするために、今年の残りのキャンプをいくつかのパートにわけました。里谷選手はキャンプを通じて我々が設定した目標を全てクリアし、特に腕の位置取りは目に見えて向上しました。里谷選手のグラウンドでの姿勢は確実に改良され、今年8月のオーストラリアでのモーグルトレーニングに向け準備は万端となっています。
過去10日間においては、ランニングやジムでの、フィジカルトレーニングを増やしました。来年1月のライバル達との対峙に向け、いい位置につけていると思います。
私たちは数多くあった里谷選手の悪い癖を減らすことに成功しました。
短い期間で、彼女は目覚しい変化を遂げました。長期的には、さらにトレーニングを強化しこの「変化」を永続させたいと考えています。苦手分野や競争によるストレスがこれ以上増えることは、ここまでの成長を妨げてしまうことになるでしょう。
 
次のキャンプでも私たちは引き続き「バック・フル」に重点を置く方針です。この計画に沿って、粘り強く正しく手順を踏み、基礎固めを確実にしたい考えです。
ただ、オーストラリアでの競技会で、里谷選手が「バック・フル」をものにできるかどうかはまだまだ疑問です。現時点では、夏の競技会でこの新技を盛り込むことは考えておらず、「バック・フル」は冬シーズンに向け再度調整を行う予定です。
スキー競技において「バック・フル」はことほど複雑な技で、安全に行うには完璧に真っ直ぐなボディラインを作らなければなりません。しかし、里谷選手は練習が足りないためか、まだ安定して真っ直ぐな姿勢を維持することができないのです。彼女がこの技をまだ怖れていることが主因とみられます。
彼女にはまだこの技は荷が重いようです。従いまして、今後はウォータージャンプ台でのトレーニングを再開し、「バック・フリップ」をメニューに入れ、トランポリンで「バック・フル」が充分にこなせるようになってからウォータージャンプ台に駒を進める予定です。今後もエア担当コーチのディミトリ氏とともに、トレーニングを行い、彼女に自信をつけさせて、安定感を増すようなプランを練っていきます。

【ウォータージャンプ 技のリスト】
※次回エアトレーニングのキャンプの目標レベル

レベル 特徴・種類
バック・レイアウト 5 ストレート
バック・フル 3 1バックフリップ・1回ひねり

キャンプでは技の内容を濃くします。技術の向上には時間がかかるので里谷選手の全面的な取り組みがなければ望むような結果は得られません。

以上

スティーブン・フィアリング
国際フリースタイルスキーの前メンバー。
カナダスキーチーム、日本スキーチーム、日本オリンピック委員会、
韓国スキー協会でコーチを経験。
1994年に来日。
日本語も堪能で文化もよく理解している。